2009/04/01

モヤモヤする

少し前に人工衛星が大破したというニュースがあった
のを覚えているだろうか。

地球の周りには、無数の人工衛星が回っている。

そのため大破した衛星の破片が、他の衛星の軌道に入り、
二次被害が起きるのではないかという懸念がある。

相対論的な効果が無視出来ないほどの猛スピードで
ぶんぶん回っているから、少しかすっただけでも致命傷
になってしまう。

だから関係者達はひやひやものである。

ただでさえ開発して打ち上げるまでに、莫大な時間と
費用をつぎ込んできたし、もしぶち壊れたとして、
それがGPSとかに使われているやつだったら、経済的な
大損失になる。

でも殆どの人はあまり心配してないと思う。

自分の周りでそんなこと心配している人がいるかどうか
考えてみればわかるでしょ。

自分の頭の上に落っこちてきて、脳天をかち割られる
なんてとこまでは誰も考えないもんね。

もちろんそんな確率はものすごく低い。



自分は研究で天文衛星を使っているんだけど、
いくつかのうちの一つに“shuzaku”という衛星がある。

こいつは日本の41番目のX線天文衛星で、その高性能を
生かしバリバリ成果をあげている。


そのshuzakuは周回軌道が低いという特徴があり、観測
を優位に行うことに貢献している。

なぜ有意になるかというと、バックグラウンドが低く
なるからだ。

宇宙からは高速で荷電粒子が降って来ているので、それら
が衛星にぶち当たるとバックグラウンドとして観測される。

例えば、太陽を観測したいと思ったら、太陽から出ている
電磁波だけ観測できるのが理想となる。

ぶちあたる邪魔な粒子を取り除くことはとても重要になる
わけだ。

周回軌道が低いと地球の地磁気に粒子が捕らえられ衛星に
は当たりにくくなる。

このように軌道の低さをうまく利用している。



研究ではそのshuzakuが観測したデータをアーカイブから
ダウンロードして、専用のソフトウェアで解析する。

そのshuzakuなんだけど、最近解析していて今までと違う
イメージを見せていることに気がついた。

X線に感度があるCCDカメラを搭載していて、そこにはあら
かじめ点源をワザと入れてある。これをCalソースって言っ
てるんだけど、なんでそんなことをするかというと、簡単
に言えば、わかっているものがどう映るかを見ることで、
未知の天体を撮像したときに、比較ができるようになるか
らだ。

そのCalの近く視野に何やらモヤモヤとした塊が、湧き出す
ように方向を持って広がっているのだ。

イメージを200秒づつで10分割し、時系列で見比べてみた
ところ、やはり広がっていることが確認できた。

モヤモヤとしているのは、おそらくピントがあっていない
からだと思われる。

観測対象の天体よりもかなり近くに存在している可能性が
ある。

もしくはCalソース自体が何か不具合を起こしているかも
しれない。

とにかくこの正体を突き止めないと研究に支障が出てしまう。

こんな研究以外のことに時間を割いている暇はなくて嫌に
なるけど、何とかするしかない。

とりあえず先輩と先生に報告して、shuzakuのCalの較正は
京都大学がやってるもんで、京大の知りあいに一報いれて
報告した。

それから先輩に問題の観測データのObservation number
を教えて、同じイメージを見てもらうことに。

そこにはやっぱり何かが写りこんでいた。

情報が少ないので問題のデータの前後に行われた観測につい
ても、イメージを抽出してみることにした。

3観測さかのぼってみると、モヤモヤがなくなっていること
がわかった。

このことからモヤモヤの発生時刻が2000秒以内に絞れた。

念のためにもう1観測さかのぼって解析してみたところ、
高速で移動する彗星のようなものが写りこんでいること
がわかった。

大きさを見積もってみたところ、イメージ上で一番長い
辺が約20mあるようだ。

ただこれとモヤモヤとの因果関係ははっきりとしない。

思いつく限りのことはもうやりつくしてしまった。
さてこれからどうしよう。

モヤモヤの正体はもやもやしたままになりそうだ。

2 comments:

haru said...

もやもやのおっさんが入りこんできたか。
面倒臭いけどなんとかしなきゃいけないってのが・・・考えただけでめんどう。
やらなしゃあないな。

戸塚 晃太 said...

>haruさん
今日だけごめんなさい。正しくはSuzakuだよ。haruさんは気づくと思ったんだけどな。それともわざとか?

読者の皆さん、ご訪問ありがとうございます。便利なRSS購読をお勧めします!